「たねぷろじぇくと」とは

「たねぷろじぇくとネットワーク」の立ち上げ

たねぷろじぇくとネットワーク(正式名:被災地里山救済・地域性苗木生産・植栽プロジェクト)は、東日本大震災被災地の里山と生物多様性の再生を目的に、高橋一秋(長野大学環境ツーリズム学部・准教授)の呼びかけによって2012年7月に設立された任意団体です。立ち上げの際の主力メンバーとオブザーバーは「プロジェクトの仲間」をご覧ください。

「たねぷろじぇくとネットワーク」が目指す全体像

長野大学・塩田西小学校(長野県上田市)と被災地の小学校・中学校・高等学校(宮城県山元町とその周辺市町村)が協力し合いながら、10種類のワークショップを開催し、被災地の里山と生物多様性の再生を目指します。

「たねぷろじぇく」教育・研究活動の全体像

「たねぷろじぇく」が取り組む「教育」と「研究」の2つの柱は、「ワークショップの開催」と「苗木の生産・植栽」です。長野大学の学生は、「タネ集めから始める森づくり」を楽しみながら学べる「環境教育プログラム」を開発し、そのプログラムをワークショップの中で実施します。
コナラを中心とする広葉樹の苗木を生産・植栽する方法と、その後の森づくりに必要な保育管理の方法について、さまざまな実験を実施し、確かな知識清算と技術開発を目指します。学生達は、これらの研究成果をもとに、小学生・中学生・高校生を対象とする「環境教育プログラム」を開発します。
学生達は、そのプログラムをワークショップで実施する経験を通じて、環境教育の意義や手法を体験的に学びます。
これらの教育・研究活動を展開していくことで、海岸防災林の再生を目指します。また、海岸林と人々との新しい関わりを築き、海岸林が潜在的に持つ生態系サービスを上手に再生・活用・保全していくことで、地域社会の再生も目指します。

「たねぷろじぇくと」の目標

「たねぷろじぇくと」では、次の6項目を活動の目的とします。

「たねぷろじぇくと」が目指す森づくり

被災地で集めた種子から地域性苗木を生産し、それらの苗木を植栽することで、豊かな里山を再生します。

望ましい海岸林再生イメージ

林野庁がまとめた「望ましい海岸林再生イメージ」をもとに作られた模式図です。コナラなどの広葉樹は、海とは反対側の陸側に配置することが望ましいとされています。「たねぷろじぇくと」では、この考え方に基づいて、海岸防災林の内陸側にコナラを中心とした広葉樹林を再生します。

人間社会を支えている森の「生態系サービス」

森には、さまざまな「生態系サービス」(恵み)が潜在的に存在しています。ミレニアム生態系評価の報告書で述べられているように、これらの生態系サービスを再生し、適切に活用することで、われわれ人間の生活は豊かになると考えらます。「たねぷろじぇくと」は、豊かな生態系サービスが活用できる森づくりを目指します。

生態系サービスを支える「基盤サービス」と「生物多様性」

植物は光合成を行って有機物を生産し、その有機物を植食者が食べ、その植食者を消費者が食べ、やがて死んだ動植物は土壌中の分解者によって無機物に分解され、その無機物を再び植物を栄養素として利用します。このような「食べる-食べられる」の食物連鎖によって生物循環と物質循環が成り立っています。これらの働きが「基盤サービス」です。
「生物多様性」が高い状態とは、さまざまな生物で賑わっている状態を指します。「生物多様性」が高く、「基盤サービス」が良好に機能している生態系は、充実した「生態系サービス」を生み出すと考えられます。「たねぷろじぇくと」は、生物多様性を向上させるとともに、多様な生態系サービスの再生と適切な活用によって「地域社会の持続的発展」を目指します。

「たねぷろじぇくと」の「地域性苗木」生産

地域性苗木とは、苗木の植栽対象地周辺で採取した種子から生産した苗木のことを言います。つまり「地元産の苗木」です。地元産の地域性苗木を植栽することで、地域固有の遺伝子資源や自然生態系の攪乱を防ぐことができます。

「たねぷろじぇくと」のタネ集め

将来、苗木を植栽する場所からなるべく近い山林から種子を採取するのが最も良いと考えられます。そこで、「たねぷろじぇくと」では、「深山山麓少年の森」(山元町)でタネを集めることを基本としています。しかし、年によっては、種子が実らない年があります。その時は、「白石城」(白石市)でタネを集めることにしています。それでも、タネが集められない時は、「ことりはうす」(蔵王町)まで行ってタネ集めをします。

「地域性苗木」を活用しない植栽のリスク

「たねぷろじぇくと」で地域性苗木を活用した植栽を重視する理由は、地域固有の「遺伝子の攪乱」を避けるためです。異なる遺伝子構造を持った苗木を持ち込んで、もともと自生していた樹木と交配が繰り返し起こると、その地域の環境に適応できない樹木が死亡し、この地域の遺伝的多様性が減少してしまいます。その結果、想定される最悪のシナリオは、その種類の樹木が子孫を残せなくなり、個体数の減少や絶滅のリスクが高まることが予想されます。しかしながら、将来、その種類の樹木にどのような影響が出るかは完全に予測することはできません。したがって、「たねぷろじぇくと」では、そのような最悪のシナリオを避けるために、「地域性苗木」を活用した里山再生を目指します。

引用文献:「広葉樹の種苗の移動に関する遺伝的ガイドライン」(森林総合研究所 2011)

「たねぷろじぇくと」の植栽地

植栽地は、「みやぎ海岸林再生みんなの森林づくり活動」の対象地(山元地区)の一画(約0.1ヘクタール)です。
2015年3月に、被災地里山救済・地域性苗木生産ネットワークは、宮城県と山元町との3者の間で、海岸防災林の再生に向けた活動に関して活動協定を締結しました。締結期間の5年間は、責任を持って苗木の植栽およびその後の保育管理に取り組んでいきます。

海岸防災林「山元地区」植栽計画

3年間で植栽完了を目指します。その後は、豊かな森になるまで、何十年も関わり続けます。

「たねぷろじぇくと」の活動サイクル

コナラの場合、種子を集めるのは10月、その種子を蒔くのは10月~11月です。その次の年の春に種子は発芽し、生長を始めます。そこから、3年間かけて苗木を育てます。そして、発芽から3年経った春に苗木を被災地に植栽します。1期目の苗木生産は2013年にスタートしました。2014年は2期目、2015年は3期目と、苗木の生産は1年ずつずらしながら、継続していきます。

「たねぷろじぇくと」ワークショップの予定

プロジェクトに参加する小学校を中心に、10種類のワークショップを開催します。

助成金

たねぷろじぇくとの活動は、以下の支援団体から助成金を受けて実施しています。

経団連自然保護基金
○2013年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産プロジェクト
○2014年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産プロジェクト
○2015年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産プロジェクト
○2016年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産・植栽プロジェクト
○2017年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産・植栽プロジェクト
○2018年度採択(環境教育)
 プロジェクト名:被災地里山救済・地域性苗木生産・植栽プロジェクト

大成建設自然・歴史環境基金
○2013年度採択(自然環境・研究)
 プロジェクト名:ペットボトルを活用した地域性苗木生産手法の開発
○2016年度採択(自然環境・研究)
 プロジェクト名:ペットボトル植木鉢で生産した地域性苗木の植栽・保育管理方法の開発~東日本大震災後の海岸防災林再生を目指して~

問い合わせ先

たねぷろじぇくとネットワーク 代表 高橋一秋
公立大学法人 長野大学 環境ツーリズム学部内
〒386-1298 長野県上田市下之郷658-1
Tel: 0268-39-0136
e-mail: k-takahashi@nagano.ac.jp