植栽苗木の樹種選定に関する論文
<背景>
たねぷろじぇくとでは、広葉樹の苗木を生産し、海岸防災林再生地に植栽することを目指しました。海岸防災林の主要な樹種はクロマツですが、クロマツは国や県によってマツノザイセンチュウに感染しても枯れにくい抵抗性マツが生産され、植栽されました。一方、広葉樹は宮城県によって植栽適正樹種が示されましたが、種類が少なく、宮城県内でもそれぞれの地域によって、それらの樹種が適切かどうか、判断しがたい状況にありました。
そこで、たねぷろじぇくとでは、植樹活動を行う宮城県山元町で唯一、津波の被害を受けつつも、流されずに残存した海岸防災林に、どのような広葉樹が自生しているのかを調査し、山元町の海岸防災林再生地に適した植栽樹種を選び出すことにしました。
<概要>
東日本大震災後の大津波で被災した海岸防災林で、その後も生残していた広葉樹を調査し、各地域に適した植栽樹種を選定する方法を提案しました。
調査は震災から約2.5年後に宮城県山元町の海岸防災林で行いました。5 m×5 mのグリッド100個からなる50 m×50 mの調査プロットを林内に設置し、各階層(0-0.5 m、0.5-2 m、2-5 m、5-10 m、10 m以上)で生残が確認された全ての木本(稚樹・実生を含む)を対象に、出現頻度と種子生産の状況を調査しました。ここで得られたデータと独自に定めた基準(①出現頻度が20%以上の樹種、②種子生産が確認された樹種、③小低木、つる性木本、外来種、人体に害を及ぼす樹種は対象外)を用いて樹種を選定しました。
その結果、宮城県が植栽適正樹種として定めている2樹種(コナラ、ヤマザクラ)に他に、広葉樹9種(ハンノキ、シロダモ、アカメガシワ、イヌツゲ、ウメモドキ、ネズミモチ、ヤマグワ、ガマズミ、コマユミ)を新たに選定することができました。
<論文リスト>
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大内梓・高橋一秋 (2023) 東日本大震災後の海岸防災林再生のための広葉樹種選定に関する提案: 生物多様性と生態系サービスの向上を目指して. 保全生態学研究 11(2): 391-399(査読付)
<関連投稿>
■2013年3月29日(金)
植栽苗木の樹種選定に関する学会発表
■2013年9月2日(月)13:00~16:00
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